2023/10/15 12:00

                【有松臣子】


父も人形師、夫も人形師という縁に恵まれ、私は幼いときから人形作りにかかわってきました。

結婚した後、夫の作る木目込み人形の衣装を木目込む仕事をしてきました。

 

人形の衣装の色使い柄選びはとても難しく

最初の数年は「この色合わせでいいのだろうか」「お客様に求められているお人形になっているだろうか」と不安ばかりでした。

試行錯誤しながら、私ならではの色合わせや柄の使い方になったのは仕事を始めてから10年はかかりました。

色や柄、生地の質感、お人形のサイズ、形に合わせて選んでいくのはもちろんですが、

1番は、お人形を迎えてくれる方がこのお人形がいいと心から思ってもらえる布地選びを心がけております。

私が40歳当時、雛人形は作れば売れるという時代で、寝る間も惜しんで作ったものです。多分、私の人生の中で、一番働いた時代だったのではないでしょうか。 

そして今、私は79歳。人形が飛ぶように売れた時代は去りましたが、夫、息子と共に、木目込み人形を作り、そして育てています。

この人形にはどんな衣装を着せたら美しく見えるか、もっといい色を、もっといい布地をと、人形への想いは尽きません。